2016年12月04日

宗谷トンネルの地質その1(はじめに)

ロシア側がシベリア鉄道の北海道への延伸構想を提案しているとの報道が出ています。
それに対し日本側の反応はあまり良くありません。
私も夢物語に近いストーリーであると考えていますが、日本にとって本当にメリットがあるのかしっかりとした技術的検討は必要だと思っています。
北海道とサハリンの間の宗谷海峡を橋またはトンネルで連絡する構想ですが、北海道出身の地質技師である私は宗谷トンネルの地質がとても気になります。

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図.宗谷海峡(ラ・ペルーズ海峡:La Pérouse Strait)の位置図

宗谷トンネルの地質は何だろう?TBMで掘れるのか?断層はないのか?一部はNATMの方が良いのか?
私が心配してもどうにもなりませんが、地質が気になるのは職業柄仕方がありません。

トンネルの地質説明の前に、先ず鉄道で何を運ぶかというテーマがあります。
ロシアから石油と天然ガスを運べばよいという間違った議論がなされていることがあります。
以下の記事では
https://dot.asahi.com/aera/2016101200280.html?page=1
「現在ロシアから輸入している石油とLNGを、20両編成の貨物列車と仕立てた場合、1日あたりの貨物列車の本数は30本になる」としていますが、貨物列車で運ぶことはあり得ません。

極東ロシアの油田から極東の港までは、原油と天然ガスはほぼ並走したパイプラインで運ばれています。
東シベリア・極東ロシアのパイプライン.png
図.東シベリア・極東ロシアのパイプライン(荒井、2014)

サハリンの場合も、サハリン北部オハ地区の油田からプリゴロドノエ港までパイプ流送です。
港でいちいち原油をタンクに詰めたり、天然ガスを液化して貨車に積んで、宗谷海峡を渡るよりも、パイプラインを延伸し、海底パイプラインで宗谷海峡を渡る方が経済的かつ現実的です。
貨車で運べば、港での積み替えコスト、鉄道での輸送コスト、線路使用料が高額になり、かつ日本からは空になったタンクを回送しなくてはいけません。

ただし日本国内のパイプライン敷設は困難を極めると思います。地権者が多数にわたり、用地が分断されるため用地提供に反対する地権者も出てくるでしょう。
北海道では苫小牧(勇払ガス田)と石狩湾新港との間にパイプラインがあります。宗谷海峡をパイプライン輸送で来た原油と天然ガスは、用地買収が難しいのであれば、稚内からは鉄道での貨物輸送でもいいかもしれません。ただし宗谷本線の改修、増強が必要です。
貨物が走ったとしても、宗谷本線の黒字化は難しいと思います。貨物の線路使用料で黒字になるのであれば、北海道-本州の流通の大動脈である函館本線函館-長万部間、室蘭本線の長万部-東室蘭間も黒字になるはずですが、JR北海道の資料を見ると毎年赤字を垂れ流しています。

河川沿いの堤防にパイプラインを敷設するのも良いかもしれませんが、河川は湾曲していることが多く、敷設距離が伸びそうです。河川管理者の許可が出るかもわかりません。
稚内までいずれ高速道路ができますが、高速道路に並走してパイプラインを敷設するもの難しそうです。
稚内から国内向けのパイプラインを敷設するのに、実はちょうど良いと思われる場所があります。
宗谷本線です。現在、貨物列車が通らず特急列車3往復、普通列車3往復ちょっとだけの宗谷北線のレールをはがし、その土地にパイプラインを敷設するのです。

JR北海道は輸送密度500人/km以下の鉄路は列車を走らせる直接経費すら賄えないと言っています。
この先誰が線路を維持していくのか分かりませんが、赤字が続くことは避けられません。疲弊は今後も続きます。

札幌-稚内間は最速の特急を使っても、鉄道から飛行機へシフトすると言われる「4時間の壁」を大きく超えた5時間5分(指定席で10,450円)もかかります。バスでは5時間50分(6,200円)です。札幌-稚内間は飛行機、旭川-稚内は高速バス、普通列車はローカルバスでよいのでないでしょうか?
宗谷本線を廃止しパイプラインに転換すると、地方自治体にはパイプラインの土地使用料と資産税が収入として入ります。この収入を札幌-稚内間の航空便の搭乗率保証、高速バスの助成金、ローカルバスの運営費に当てます。

鉄道がなくなるのは残念ですが、観光客は便利に稚内に行けてハッピー、地方の人は地域に密着したローカルバスが増えてハッピー、JR北海道はお荷物路線が消えてハッピー、地方自治体は収入が増えてハッピー、その結果、安い石油・天然ガスが入ってきて電気代が下がり道民もハッピーです。

名寄以南をどうするか問題ありますが、北旭川駅(貨物駅)まで石油と天然ガスのパイプラインを伸ばします。できれば石狩川沿いに新十津川まで進み、そこから札沼線跡地を通って当別の北側から石狩湾新港まで敷設します。そうすれば2019年に運転を開始する北海道初のLNG発電所にいずれ直接ガスを供給できます。

だいぶ話が横道にそれてしまいましたが、上述のような概念的な検討は、いずれ国から発注される詳細検討業務の入札を勝ち取った会社の技術屋さんがデータを用いて、様々なケーススタディをすると思います。
餅は餅屋に任せるとして、私は地質に戻ります。

下の図のとおり、北海道の背骨とサハリンの地質は基本的には同じです。SH(Sakhalin-Hokkaido)と書かれた地層は白亜紀の地層です。
ずいぶん手抜きな説明ですが、次回からもっと詳しく解説します。
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図.北東アジアの地質図(Mihalasky et al.,2010)

引用文献
荒井智裕(2014):どこに向かうのかロシア−東方に敢然と流れ出す石油天然ガス−.石油・天然ガスレビュー.2014.9 Vol.48 No.5.p55-67.
Mihalasky et al.(2010): Porphyry Copper Assessment of Northeast Asia−Far East Russia and Northeasternmost China. U.S. Department of the Interior U.S. Geological Survey.
Scientific Investigations Report 2010–5090–W.p118.


posted by 日露資源ポテンシャル研究所 at 01:02| Comment(0) | 宗谷トンネル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする