2016年05月25日

チュクチ自治管区の銅・金鉱床(Peschanka鉱床)

Peschanka鉱床はチュクチ自治管区第二の都市Bilibino 市(人口約5 千人)より南西約250km に位置する銅と金を含む斑岩型鉱床であり、極東ロシア最大の斑岩型鉱床であるとされています。
Peschanka鉱床の鉱石は銅を主体であり、金品位は平均0.32g/tAu と低品位です。
この鉱床は未開発ですが、鉱床規模が大きく、仮に開発されることになれば、産金量はチュクチ自治管区有数の規模となるでしょう。

Peschanka鉱床の発見は1960 年後半であり、その発見意義は、斑岩型銅鉱床のポテンシャルが、それまで銅は不毛と考えられていたロシア極東まで広がった重要な発見であったとされています(Kotlyar、1996)。
鉱床発見の手掛かりとなった土壌サンプリングでは、Cuの地化学アノマリーはバックグラウンド>50ppmCuに対し70〜120ppmCuと低く、他の一般的なポーフィリーと異なりアノマリー値はとても小さい特徴があります。この低いアノマリーの要因として、永久凍土における銅の溶脱などが指摘されています。

Peschanka鉱床では南北に伸長した白亜紀前期の石英モンゾ閃緑岩や花崗閃緑岩ポーフィリーがジュラ紀後期~白亜紀前期の花崗閃緑岩を主体とする母岩を貫いています。
Peschanka 鉱床およびVesennee 鉱床地質図.png
図.Peschanka鉱床の地質図(Noklerberg et al.,2005)

主にCu-Mo 鉱物を伴う硫化物細脈と鉱染が貫入岩側および母岩側に認められます。
変質は典型的なポーフィリーの変質であり、中心部にポタシック変質、フィリック変質が認められ、その外側にはプロピリティックなハロが広がります。ポタシック変質の変質年代は136Ma とされます(Nikolaev et al.,2012)。

鉱石鉱物組み合わせは
(1)フィリック変質を伴う輝水鉛鉱
(2)石英-セリサイト-緑泥石変質を伴う黄鉄鉱, 黄銅鉱
(3)石英-セリサイト変質・黒雲母変質を伴う黄銅鉱, 斑銅鉱, 四面銅鉱
(4)あらゆる変質タイプに伴われる硫化
の4 タイプがあります。

Zvezdov et al.(1993)の報告によると、鉱床の中心部は角礫が分布し、鉱化したモンゾナイトおよび石英モンゾナイトポーフィリーのフラグメントを含み、不毛石英によってセメントされています。
2次富化帯の厚さは数十mを超えません。
Peschanka 鉱床の地質断面図.png
図.Peschanka鉱床の地質断面図(Zvezdov et al.,1993)


鉱量は長らく940Mt@0.51%Cu,0.42g/tAu とされてましたが、深度700mまで試錐探鉱された結果、1,350Mt@0.61%Cu,0.32g/tAu(埋蔵金量432tAu)まで鉱量が増えています(Mining Journal ,2012)。

Peschanka鉱床の所有者は、Millhouse Capitalという投資会社です。
この投資会社はロシアの石油王であり超資産家でもあるロマン・アブラモヴィッチ氏の投資会社です。
同氏は前チュクチ自治管区知事でもあり、イングランドのサッカークラブのチェルシーのオーナーです。
現地子会社であるGDK Baimskaya は、2008 年の競売で本地区の25 年間のライセンスを10.78 億ルーブル(約26 億円)で獲得し、2010 年に約31,000mの試錐キャンペーンを行いました。
2008 年以来、内容は明らかになっていませんが100MUSD を投資したとされます。
Peschanka探鉱キャンプ.png
図.2010 年のPeschanka探鉱現場キャンプの様子(Google Earth, Panoramio より)

新聞報道等ではPeschanka鉱床や周辺鉱床などがあるBaimskaya地区では、GDK BaimskayaのAsset は銅量27Mt、金量1,600tもあるとされています。
2012 年初頭にはロシア最大の金生産会社であるPolyus Gold International が総額500MUSD でのオファーをしましたが、Millhouse は金額が十分ではないとして断っています。
2012 年6 月29 日の現地報道では、ロマン・アブラモヴィッチ氏は取材に対しBHPBilliton 社と交渉中であることを認めましたが、結局はこの話は流れてしまいました。
2016年5月の報道によれば、ロシア最大の産銅会社Norilsk Nickelが、アブラモヴィッチ氏が権益を持つBaimskaya地区の探鉱に参加することに興味を示しています。

引用文献
Kotlyar, B.B.(1996):Geochemical Exploration in the Former Soviet Union., Explore.,vol91,p1-10. April, 1996.
Noklerberg et al.(2005): Metallogenesis and Tectonics of the Russian Far East, Alaska, and the Canadian Cordillera. U.S. Geological Survey., Professional Paper 1697.
Nikolaev Yu.N., Baksheev I.A., Chitali-n A.F., Kal’ko I.A.(2012): The new data of geology,mineralogy, and geochemistry of the Baimka Cu-Au trend, Chukchi peninsula,Russia. Baikal International Conference "Geology of Mineral Deposits", p24-25.
Zvezdov V. S., Migachev I.F.,and Girfanov M.M. (1993): Porphyry copper deposits of the CIS and the models of their formation.,Ore Geology Reviews, 7,p551-549.
Mining Journal (2012): Mining Journal special publication – Russia Far East & Irkutsk, February 2012.
posted by 日露資源ポテンシャル研究所 at 10:24| Comment(1) | チュクチ自治管区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Posted by コトタマ at 2016年05月27日 19:49
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