2016年05月28日

チュクチ自治管区の金鉱床(Kupol鉱床)

Kupol鉱床はKinross社が100%権益を有する坑内掘り操業中の鉱脈型金銀鉱床です。
チュクチ自治管区のフラッグシップ的な鉱山であり、極東ロシアで最大級の産金量を誇る鉱山を、説明していきます。

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図. Kupol 鉱山設備外観(Kinross 社Website)

1)位置及びアクセス
チュクチ自治管区第2 の都市、Bilibino市(人口5,000 人)より南に約300 qのウインターロードでサイトに到着可能です。夏季でも川を渡ることが出来る特殊車両ならばアクセスが可能です。
サイトには飛行場が整備され、夏季はヘリまたはセスナ機にて、Magadanから約2.5 時間、Bilibinoから1 時間で到達可能です。
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図. Kupol鉱床位置図(Henderson,2011)

2)気候
Kupol鉱山は北緯66°47′に位置しており、北極圏に位置している鉱山です。
気候は厳しい冬季が8〜8.5 ヵ月続き、夏は短い。年間の平均気温は-13℃であり、気温変動は-58℃〜33℃です。日平均気温が0℃を超える日は年間50 日にも満たなく、9 月上旬には氷点下となります。
そのため9月中旬から降雪が記録されます。根雪はおよそ237 日間存在しますが、その厚さは平均38〜45cm です。年間を通じて、強風が吹くことが多いです。

3)沿革
1966 年:ソビエト政府による20 万地質図作成の際に石英脈が発見される。
1995 年:政府主導の本格的探鉱プログラム開始。沢砂地化探開始。
1996〜1998 年:マッピング、物理探査(磁力、比抵抗)、トレンチ調査(4 本)、試錐(2孔)。
1999 年:地元のMetall 社がKupol を含むライセンスの入札で、権益を獲得。
2001 年:トレンチ(31本)、試錐(26孔)、石英脈の詳細マッピング
2002 年:Bema社が権益の75%を獲得し、プロジェクトに参入。
2003 年〜:探鉱を継続、土壌地化探(7.8q2)、Infill試錐を実施。
2005 年:鉱量計算およびF/S が完了。
2006 年5 月:建設開始。
2007 年2 月:Kinross 社がBema 社を買収。
2008 年5 月:生産開始
2011 年4 月:Kinross 社が残りの権益25%を地元企業から購入し、権益100%となる。

4)地質概要
鉱床は白亜紀のオホーツク-チュコートベルトに位置しており、母岩は東側に緩く傾斜した安山岩〜玄武岩質安山岩溶岩および火山砕屑物です。
Kupol鉱床は低硫化型の浅熱水性Au-Ag鉱脈であり、鉱脈の走向は南北方向です。
金銀は銀黒部に富んでいる特徴があります。
鉱化帯は南から、South Extension、South、Big Bend、Central、North、North Extention の6 つに分かれており、その延長は南北合計3.9qに及びます。
その内、Big Bendが最も品位が高く、ボナンザとなっています。

5)岩相
Kupol鉱床の胚胎母岩は主に安山岩質の組成を持つ溶岩流や砕屑物からなります。安山岩質溶岩流は連続性がある塊状のユニットで、1〜4 oの自形長石斑晶が40〜60%を占め、斜方輝石、黒雲母を含みます。
安山岩質砕屑物は、火山灰質凝灰岩や火山礫凝灰岩などであり、層厚は概して5〜20mです。
流紋岩質ダイクは上述の岩相を貫く非顕晶質岩なダイクであり、流動縞状構造が認められることもあります。ダイクの走向はN〜NE で、傾斜はほぼ垂直に近く、その厚さは最大70mに達します。

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図. Kupol鉱床地質平面図(Henderson,2011)

6)鉱脈
鉱脈は南北走向を持ち、傾斜は東に75〜90°です。脈の内部には角礫化が認められます。硫化物に富む(2〜7%)脈はボナンザとなっていて、銀硫塩鉱物が濃集した“銀黒”が認められます。
また櫛歯状の石英(アメジスト)や葉片状方解石を置換した石英なども認められています。
石英脈についてログの記載などに基づき、以下の産状が報告されています。
@塊状鉱脈
塊状からザラメ状の細粒石英からなる脈であり、概して炭酸塩に富む低温の後期ステージの産物。脈の中心部には櫛歯状のアメジストが認められることがある。
Aコロフォーム状〜累被状鉱脈
石英+硫化物/硫塩鉱物からなる銀黒と細粒石英とのリズミカルなバンドが発達する。コッケイド(輪状)構造、格子構造も認められる。
B角礫脈
角礫した石英脈からなり、基質には岩粉、硫化物、硫化物に富む石英などの異なる角礫タイプがある。
Cストックワーク状
主要鉱脈の上盤側および下盤側に発達しており、切り合い関係が認められる細脈の幅は10cm 以下である。一方、ストックワークに似るが、切り合い関係が認められない細脈群はシート状鉱条と呼ばれている。Kupol 鉱山では石英脈が10vol%以上占める産状をストックワーク/シート状鉱条と呼んでおり、その幅は最大55mに達する。

鉱化の中心であるBig Bend Zoneでは、鉱脈の走向は575mであり、北端は流紋岩質ダイク、南端は断層によって切られています。
脈幅は1〜22mで平均は4.85mです。
低品位のストックワーク/シート状鉱条を含めると幅は30mに達します。ただし鉱脈は中山を含むことがあります。
Big Bend Zone 91277 N の地質断面図.jpg
図.Big Bend Zone 91277 N の地質断面図(Henderson,2011)

7)変質
鉱床の変質は広域にはプロピライト変質であり、鉱床中心部に近づくにつれ、珪化、粘土化、ポタシック変質が強くなります。
特に鉱床の浅部では粘土化変質が卓越します。
プロピライト変質は緑泥石-方解石+セリサイト+黄鉄鉱+緑簾石からなり、鉱脈から400m以内の母岩で認められ、特に上盤側で発達しています。
粘土化変質は裂罅充填の炭酸塩鉱物と鉱染状黄鉄鉱を随伴し、特に凝灰岩質母岩で発達しています。
また鉱床北側では高度粘土化変質が認められます。
南側では硫酸塩鉱物に富んだ粘土変質が認められ、スメクタイト-カオリナイトが卓越しています。
珪化変質は概して弱いですが、ヴァギーシリカが認められることもあります。
脈際では珪化、氷長石、珪化変質が上盤側/下盤側の火山岩類に認められ、珪化は局所的に脈から40mに達することもあります。
地表付近では珪化-氷長石化(ポタシック変質)が卓越するようになります。

8)鉱化
Au-Ag品位は地表下250〜350mが最も品位が高いことが判明しています。
最も深い試錐でも銀黒は認められており、深部はOpenとされています。
地表での各ステージの切り合い関係から、本鉱床のステージは5つのステージに分かれています。
StageT:銀黒を含むコロフォーム状・累被構造状石英-氷長石
StageU:暗色の石英フラグメント、硫塩鉱物に富む基質を持つ石英-硫塩鉱物角礫
StageV:クリーム色〜黄色を呈する塊状石英±鉄明礬石からなる石英-鉄明礬石角礫
StageW:鉱脈の中心部に向かって最大4mに達するバンドを構成する塊状白色石英
StageX:晶洞を充填する櫛歯状のアメジスト

このうちAu-Ag品位が高いのはStageTとUです。
主要Au-Ag鉱石鉱物は、エレクトラム、含銀四面銅鉱、針銀鉱、ステファン鉱、濃紅銀鉱であり、若干ですがナウマン鉱も認められます。
他の鉱物として、黄鉄鉱、白鉄鉱、黄銅鉱、硫砒鉄鉱、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、安四面銅鉱が産します。
ビジブルゴールドがしばしば確認されますが、そのサイズは3oを超えることはありません。
カオリナイト、イライト、スメクタイト、モンモリロナイトが主要な粘土鉱物であり、鉱床の上部では鉄明礬石、石膏を伴います。
地表下25〜40mまでは鉱石は酸化しており、割れ目沿いでは最大地下300mまで酸化が認められます。
酸化帯では硫砒鉄鉱の2 次鉱物としてスコロド石が認められることがあります。
流体包有物の均質化温度は160〜260℃を示します。鉱石中のAu:Ag 比は1:12となっています。

9)鉱量
2008年5月の生産開始から2014年までの7年間で8.13Mt@15.2g/tAu,190g/tAgの鉱石が採掘されました。
2014年12月末時点の可採鉱量(Proven&Probable)は7.62Mt@8.53g/tAu,110g/tAgとなっています(Sims,2015)。

10)衛星鉱体の探鉱
Kupol鉱床の周辺にも、複数の含金石英脈の存在が知られていて、Kinross社はこれまでマッピング、土壌地化探や試錐探鉱などの探鉱を積極的に推進してきました。特にKupol鉱床から東に4kmにあるMoroshka鉱床で大きな成果があり、2015年にPre-F/Sが完了しました。Moroshka鉱床では2016年も探鉱を継続し、2018年ごろの採掘開始が計画されています。

引用文献
Henderson R.D.(2011):Kupol Mine, Russian Federation, NI 43-101 Technical Report.,
Prepeard for Kinross Gold Corporation Report, p147.
Sims J.(2015):Kupol Mine,and Dvoinoye Mine Russian Federation National Instrument 43-101 Technical Report.Prepeard for Kinross Gold Corporation Report, p146.
posted by 日露資源ポテンシャル研究所 at 22:44| Comment(0) | チュクチ自治管区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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