2016年12月08日

宗谷トンネルの地質その2(サハリン概要)

当研究所では宗谷トンネルの実現性はかなり懐疑的と考えています。どんな貨物を運ぶかの議論の前に、なぜか日露間のゲージの議論や宗谷本線の議論が進んでいる感じがします。
石油や天然ガスはパイプライン輸送が適しています。宗谷海峡は海底パイプラインで、稚内からは貨車輸送でもよいですが、漁業関係者が反対しないのであれば、日本海を通って石狩湾新港まで海底パイプラインを延伸します。そうすれば石狩湾新港の火力発電所まで直接ガスを送れます。

サハリンの先端から石狩湾新港まで海底に約300kmのパイプラインを敷設するのは大変ですが、あり得ない話ではありません。ロシアの天然ガスの一大拠点であるヤマル半島からはヨーロッパ向けに何本ものパイプラインルートがあります。黒海やカスピ海を横断するパイプラインもありますが、これらは延長300kmを超えています。またバルト海を通るパイプラインは1,000kmを超えています。用地買収(または借用)が必要ないことは海底パイプラインのメリットです。

ロシア-欧州天然ガスパイプライン網.jpg
図.ロシアから欧州への天然ガス・パイプライン網(荒井,2014)

ロシアの原油・天然ガスをわざわざ宗谷海峡にトンネルを掘って貨車で運ぶことはあり得ません。ではロシアの石炭はどうでしょうか?
日本にとってロシアは、オーストラリア、インドネシアに次いで第3位の石炭輸入先です。輸入量はオーストラリアの約9分の一の1,240万トン(2012年実績)でした(JOGMEC,2014)。
これを宗谷トンネルを通って貨車輸送にするのはどうでしょうか?石炭を必要としている需要先は海沿いに面した火力発電所か製鉄所です。しかも大量に石炭を必要とします。現状どおり沿海地方のボストーチヌイ港、ナホトカ港、ポシェット港などの石炭積出港から直接需要先に船で運んだ方が経済的だと思います。

莫大な宗谷トンネル建設費を回収するために貨物の線路使用料を高くすると、輸送コストが高くなり使われなくなる。逆に線路使用料を安くすると、建設費をペイバックできなくなるというジレンマに陥る可能性があります。
トンネル建設費に加えて、輸送する貨物の種類とその輸送量、そして輸送コストに関する精査が必要です。

トンネル建設費を推定するためには、基本設計(ルート、単線or複線、ゲージとトンネル幅など)と地質に関する情報が必要です。地質によりトンネル工法やルートも変わってきます。地質情報はトンネル設計に必ず必要になる重要な基礎データのうちのひとつです。

本研究所では日本に近い極東ロシアの地下資源に着目しています。極東ロシアの地質のうち、サハリンの地質は北海道の中央部の地質と似ています。サハリンの地質は南北に延びる3つの地質帯から成り立ちます。

SE russia geology.jpg
SE russia geology L.jpg
図.南東ロシアの地質構造図(Mihalasky et al.,2010)

今回も話が脱線してしまったので、サハリンの地質に関する続きの話は次の記事にします。

引用文献
荒井智裕(2014):どこに向かうのかロシア−東方に敢然と流れ出す石油天然ガス−.石油・天然ガスレビュー.2014.9 Vol.48 No.5.p55-67.
JOGMEC(2014):平成25 年度海外炭開発支援事業 海外炭開発高度化等調査「世界の石炭事情調査−2013年度−」平成26 年3 月.655頁.
Mihalasky et al.(2010): Porphyry Copper Assessment of Northeast Asia−Far East Russia and Northeasternmost China. U.S. Department of the Interior U.S. Geological Survey.
Scientific Investigations Report 2010–5090–W.p118.
posted by 日露資源ポテンシャル研究所 at 22:26| Comment(0) | 宗谷トンネル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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